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平成13年(ワ)第2870号、平成14年(ワ)第385号損害磨償請求事件
原  告  ○ ○ ○ ○外62名
被  告  小  泉  純一郎 外1名


                     準備書面(原告ら第4回)

        
                                     2003年4月25日
千葉地方裁判所
  民事第5部合議B係  御 中

                             原告ら訴訟代理人弁護士  ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                   同           ○  ○  ○  ○
                                                       外10名

1 被告国準備書面に対して
 被告国は、第1準備書面に於いて「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳しても、単に肩書きとして付記されたものとし、内閣総理大臣としての資格を表すのは「内閣総理大臣として」との表現であると述べて「内閣総理大臣である」というのはその地位を述べているに過ぎないと主張する。
 被告小泉の参拝行為が私的なものか公的なものかの判断は、被告自身がこれを総理大臣として行ったか、小泉個人として行ったかに関する被告白身の評価によるものでないことはもとよりであるが、しかし、被告小泉自身がこの点どのように表明しているかはひとつの重要な資料であり、原告はすでに本件参拝に至る経過の中でこれを主張してきたところである。
  (1)本件参拝に於いて、被告小泉は、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳している。
 前記のとおり被告国はこの「内閣総理大臣」は単に肩書きであり、資格を示すものでないとしている。しかし、私的参拝にそのような肩書きは不要であり、にもかかわらずあえて肩書きを書くのは立場を示すことに他ならない。肩書きが、自らの立場を示す意味を持たない場合を原告らは知らない。ここで言う立場とは、要するに一国の総理大臣という立場であり、国民の代表という立場に


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ほかならないのである。
(2)被告国は、閣議決定されていない事を私的参拝の理由のひとつに掲げているが、内閣総理大臣は独任機関であり、閣議決定など必要ない。
(3)被告小泉は「自然人たる小泉」と言い、もって私的参拝であるかのような主張をしているが、内閣総理大臣は単独の自然人たる(法人でない)国家機関であり、自然人として判断し、参拝したことは、国家機関としての参拝たることをいささかも減ずるものではない。
(4)次に被告小泉は本件参拝について、「内閣総理大臣である小泉」が参拝したと明言している。被告らは、この言明は「内閣総理大臣として」という表現ではないとして、もって公的参拝であることを否認している。しかし、「である」と「として」の間に有意の差はないことは既に主張したとおりである。「である」が単に被告小泉の属性を表すだけであるとしても、被告小泉が内閣総理大臣であるのは彼がその職にある間だけのことであって、一人の人としての被告小泉の属性を表したり修飾したりする性格のものではない。(たとえぱ「元総理」というなら総理大臣を経験した人と言うことになるだろう。)
 そもそも、靖国神社への参拝は既に述べたとおり、被告小泉の総裁選に当たっての公約のひとつである。被告小泉は、8月15日という公約を曲げて8月13日と日をずらして公約の内容を変更したことを国民に向けて釈明している。すなわち、本件参拝は、被告小泉がやがて総理大臣たる地位についた場合の公約を履行したものである。このことを被告小泉は自ら表明しているのである。これほど公的性格の明確な参拝があるであろうか。
 被告小泉自身マスメディアに対し「私は公的とか私的とかこだわりません」などと述べて、この点を暖昧にし、そうして、本件訴訟においてすら、原告らの求釈明にもかかわらず「公的、私的」の区別を付けようとしないのは、「私的」といえぱ被告小泉が公約を果たしていないとの批判を怖れるからであり、このような態度そのものが本件参拝が、私的な参拝でないことを雄弁に物語っているのである。私的参拝であれぱ、そのように答えるのに何の差し障りも無いからである。
(5)更に、被告小泉自身、国会において、すなわち公の場で、本件参拝についてこのように述べている。すなわち、「日本国の総理大臣としてあのときは私の8月15日に参拝するということを約束は守れなくても8月13日に参拝するという点について、これは当時の私自身の、また今でもそうでありますけれども、参拝することによって私なりのひとつの決断をしたわけであります。」(第156国会参議院予算委員会山下八洲夫の質間に答えて)と述べ、また、「戦没者に対する敬意と感謝の念」および「日本人としては」死者にむち打たず、死んでも生前の罪まで着せて許さないというのは「日本人には」余りなじまないとの趣旨を述べ「私はこういう気持ちも外国の方にも理解して頂きたい。
私が総理大臣である限りは、そういう気持ちを込めて、時期にはこだわりませんが、毎年靖国神社に参拝する気持ちに変わりありません。」(前同 仲道俊哉議員の質間に答えて)と答弁している。


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 これらの答弁にみられるように、被告小泉は、まさしく、日本国の総理大臣として戦没者への敬意と感謝を表すため参拝を決断実行したのであり、日本人の心情を代弁し、これを諸外国にアピールする趣旨で、総理大臣の職にある限り参拝するというもので、まさしく、公式参拝の目的と効果を狙った参拝と言うべきである。

2 被告小泉に対する求釈明
 被告小泉は第3準備書面で、被告国の準備書面の内、被告小泉の主張に反しない限りでこれを援用すると述べているが、被告国が「私的参拝」としている部分が被告小泉の主張に反する部分に該当するのか否か、明確にすることを求める。この部分は政教分離原則違反を問う本件訴訟の核心部分であるからである。主張立証責任を負う原告らは、攻撃の範囲を定めるため必要であるので、是非ともこの点の釈明を求める。

                                                       以上


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